巻末プロフィールの筆者・牛山恭範の肩書はスキルアップコンサルタント。技術習得アドバイザーはどこにいったのか。それはさておき、アマゾンレビューも散々な前回の本でもさらっと触れられていた、速読に特化した本である。
速読のためにはまずは必要なところだけを破り取ってファイリングせよと勧める。総量を減らせという鉄則である。本を破るのは嫌だという場合、メモ書きする。もちろん、本の内容を理解していなければメモ、ノートなどできないわけだが、テーマ、主張など論理構造に注意して読み解き、図式化しなくてはならない。で、実は本書の内容はこの第1章で終わっているのである。
速読とは別に、ディジシステムという会社が運営する構造ノートというクラウドサービスの紹介もある。知識の習得・ストックに最適なシステムと言うことなのだが、余計なものが多すぎるアウトライナーと言ったらいいか、ぱっと見で使いづらそうなデザインで、現行バージョンはマシになっているかもしれないがそれを確かめようという気も起きないぐらいだ。
あと、本や書類を左から時系列順なり重要度順なりで整理せよとか、ビジネスマンのスキルを記憶力だの理解力だの行動力だのと分類して、それぞれを向上させると相乗効果がすごいとか、そんな話も書かれている。間違っちゃいないんだろうが、まどろっこしい、ノウハウ屋にありがちなためにする議論だなあと思ってしまう。
本書では速読を3つに分類している。ひとつは単純ないわゆる速読。暗記に特化した暗記速読、理解に特化した理解速読である。
基本となるベーシックな速読だが、全体を眺めて重要な点、目的に適った部分をピックアップし、そこだけを精読する、という方式である。
全体を眺めるというところで、写真記憶的に無意識、潜在式には情報が入っている、という説もあるらしいのだが、まあおまじないのようなものだと捉えている。
精読する段階でも、活字を脳内で音声化・意味化せず、イメージや概念と直結させる意識を持つと読書スピードは加速できる。これは感覚的体験的にわからなくはない話だ。
暗記速読は、覚えるべきテキストなどの内容の論理構造を抽出し図式化してそれをノートとしてまとめていき、繰り返し何度も眺めて覚えてしまおう、という手法である。暗記速読というが、情報を切り詰めるのが肝で、学習の総量が少なければ速読もクソもなく、むしろ暗記ノート術というべきものだ。
理解速読だが、こちらも要は、論理構造の把握ということになる。暗記速読では断片的な知識の構造を把握するという趣で、こちらは書籍全体、分野全体の構造把握が理解を助けると言ったニュアンスだ。複数の書籍に当たり、基礎から応用へと段階を踏み、知識を増やし、難解な概念も既知の知識やその論文などの全体構造などを手がかりに理解していこう、という話である。
結局、暗記速読、理解速読、と無理くり速読とつけているのだが、速読としてやることは結局一つで、意味のある分類ではない。速読を暗記に応用しよう、速読で理解力を向上させよう、という話なのだ。
暗記するためには繰り返すしかなく、たとえわずかでも読書スピードが向上すればより多く繰り返せるし、あるいはより短時間で学習が済む。難解な概念を理解するためには基礎から積み上げられた豊かな知識が必要で、そのためにはたくさん本を読んでおいたほうが良い。だから速読は意味がある。しかし、その速読とは結局、普通の速読なのである。○○速読といわれてなにかしら特殊な未知の読み方を期待してしまったのはこちらが悪いのだろう。
さらにいえば、同工異曲の本が溢れている速読という概念自体が、羊頭狗肉なものではないかと思う。パラパラめくって内容が頭に入るとか、一瞬見た画像をサヴァン的に脳内に焼き付けるとか、そういう超能力的な話ではなく、要るとこだけ読めばいいよね、という話なのだからして。ならば、省エネ読書術、ヤマ勘学習法、とか名乗るべきではないだろうか。